こんにちは、獣医師まるです。
皆さんはワクチンに対してどんなイメージをお持ちですか？
副反応が怖いから打ちたくない。安全性はどうなの？
子犬の時に打ってるからもうワクチン打たなくて大丈夫でしょ！
そんな疑問や考えをお持ちの方もいらっしゃると思います。
今回はワクチンの意味、利点・欠点、知っておいてほしい基礎知識をまとめてみました。
飼い主視点の肯定派の意見
まずはワクチンの意義に納得されている飼い主さんの意見を見てみましょう。
- 病気の予防のために打っておきたい
- 副反応のリスクより、予防できる安心感の方が大きい
- ドッグランやトリミングで接種が必須
- 毎年打っているが、副反応もなく元気にしている
- かかりつけ医を信頼している
- いつ感染が起こるかわからないから備えておきたい
飼い主視点の否定派の意見
次にワクチンに不安を持っている飼い主さんの意見を見てみましょう。
- 副反応が心配
- 室内飼いなので打つ必要がない
- ワクチン接種後の死亡例を聞いたことがある
- 毎年打つのはやりすぎ
- 獣医を信頼できない
- ワクチンで体調不良になったことがある
他にも様々な意見はあると思います。
犬猫の混合ワクチンとは？しくみを解説
犬や猫の混合ワクチンは、一体どんなしくみなのでしょうか？
ワクチンとは、病気の原因となるウイルスや細菌を弱めた（弱毒化した）ものを体に入れることで、体内に抗体を作り免疫力を高めるものです。
弱毒化されているため、ワクチン接種によって発症することはありません。
抗体が何かというと、病原体と戦うための「武器」と考えるとわかりやすいです。
敵である病原体の種類によって、必要な武器は異なります。
ワクチンを接種することで、その敵（病原体）に合った武器（抗体）を体に作らせ、実際に感染した時のために備えるのです。
ただし、抗体は1度ワクチンを打っただけで永久に体内に残るわけではありません。
時間が経つと少しずつ減っていきます。
そのため定期的にワクチンを接種して、常に病気に対する準備をしておくことが大切です。
ワクチンの利点と欠点
ワクチンのメリット
- かかると重症化したり、有効な治療法がない病気から守れる
- みんなが接種することで、感染が広がりにくくなる（集団免疫といいます）
- 動物病院に連れて行くことで健康診断にもなる
- 施設利用時に信頼が得られる
ワクチンのデメリット
- 一定期間で効果がなくなる
- 体にとって異物である
- 副反応のリスクがある
- アナフィラキシーショックのリスクがある
- 健康状態によっては体に負担がかかる
- 費用がかかる
犬猫のワクチンの副反応とは？
犬や猫も人と同様、体に入ってきた異物に対して免疫がはたらきます。
ワクチン接種後、接種部位の腫れや痒み、赤み、または軽度の元気低下、食欲低下、下痢、嘔吐などが生じることがあります。
これはワクチンという異物に対する正常な免疫応答なので、通常数日で改善します。
副反応とは別で、ワクチンに対してアレルギー反応を起こすことがあります。
アレルギーとは体に入ってきた異物に対して過剰に免疫がはたらき、様々な症状を引き起こすことです。
具体的には全身性の痒みや湿疹、顔の腫れなど、接種部位以外の全身症状がみられます。
命に関わる重篤なアレルギー反応として、アナフィラキシーショックというものがあります。
ワクチン接種後に稀ではありますが、呼吸困難や意識の消失、痙攣といった症状が現れることがあります。
この場合、迅速な対応が必要です。
接種後すぐに愛犬・愛猫がぐったりしていたり、呼吸が苦しそうであれば、一刻も早く獣医師の元で治療を受けてください。
過剰に反応してしまった免疫反応を抑制させる処置を行います。
免疫抑制剤の注射を打つ、酸素室に入れるなど、状況に応じた処置が行われます。
接種した時の体調によって、副反応やアレルギー症状が引き起こされるかどうか、またその程度は異なります。
ワクチン接種は体調の良い時に行いましょう！
そして接種後、数日間は安静に過ごしましょう。
獣医師視点の個人的意見
ワクチンに関して、獣医師の中でも異なる意見があると思います。
私の個人的な意見は、
- ワクチンによる予防効果は大きい
- 子犬・子猫はより効果的
- ワクチンによる副反応が起こる子もいる
- アナフィラキシーショックが起こる確率は低いが、ゼロではない
- 毎年打つかどうかは獣医の考え、飼い主さんの考えをすり合わせて、ペットの体調も考慮して調整するとよい
- 獣医は接種前に、ワクチンの意義と副反応について十分な説明をするべき
- 病院側は副反応が起きた場合の準備を十分にしておくべき
- 接種したくない場合、定期的な健康診断は必須
- ワクチンに限らず、獣医学について受け入れられない意見があるのは当然
混合ワクチンは必要？打つべきか迷ったら
犬猫の混合ワクチンは任意のワクチンなので、必ず打たなければいけないわけではないです。
ですが、愛犬や愛猫の病気を予防したいなら、混合ワクチンは定期的に打つことをおすすめします。
獣医はどんな病気でも治せるわけではありません。
「ワクチンを接種していれば予防できた病気」で命を落とすような場面には、誰しもが出会いたくないことでしょう。
打つか打たないかで迷ったら、まずはメリットとデメリットを把握し、てんびんにかけてみてください。
メリットの方か大きいと思われる場合は接種しましょう。
デメリットの方が大きいと思われる場合は控えましょう。
うちの子は超高齢で、ワクチンのせいで体調崩したら命に関わる。
そんな場合は無理に接種する必要はありません。
体調を第一に考えてあげましょう！
免疫力が下がりやすい時期
子犬や子猫は、母親から受け継いだ免疫に守られていますが、この免疫は生後数週間〜数ヶ月で徐々に失われていきます。
また、シニアの犬猫は加齢により免疫力が低下してきます。
この免疫が落ち始める時期に感染症にかかりやすくなるため、ワクチン接種による予防が重要になります。
ワクチンを打たない方がいいケースってある？
体調が万全でない時にワクチンを打つと、効果が十分に得られないだけでなく、副反応が出やすくなることがあります。
以下に当てはまる場合は、獣医師と相談の上、ワクチンを打つか打たないか検討しましょう。
- 元気がない
- 食欲がない
- 発熱がある
- 下痢や嘔吐をしている
- 過去にワクチンでアレルギー反応を起こしたことがある
- 過去に食べ物や薬に対してアレルギー反応を起こしたことがある
- 病気の治療中で、もし副反応が起きた時に対処できるか不安がある
一度副反応が起きたことがあっても、その次には無症状なこともあります。
愛犬・愛猫の体調について少しでも心配なことがあれば、獣医師に相談しましょう！
ワクチンを打たないことで生じるデメリット
今まで病気したことないし、費用高いし、ワクチン打たなくてもいっか。
そんな飼い主さんも少なくありません。
ワクチンを打たないと、病気の予防ができないのはお分かりいただけたと思います。
それ以外にもワクチンを打たないことによるデメリットはあります。
ペットホテルやドッグラン、トリミングサロンなど、ペットを預けたり遊ばせたりする施設の多くでワクチン接種証明書を求められます。
そして未接種の場合は利用できないことがあります。
これは、他の動物に病気が広がるリスクを減らすための措置なのです。
犬同士や猫同士で伝染する病気を防ぐためのワクチンは、その子自身だけでなく、周囲の動物たちの健康を守るためにも重要です。
上記のような施設を利用する機会がなくても、お散歩で他の子と接触したり、脱走してしまって他の犬や猫と接触するかもしれません。
感染は予防できていないと広がっていくものです。
もう一度、デメリットも考えてみてくださいね。
まとめ
ワクチンの接種は、飼い主さん自身の判断に委ねられていますが、病気の予防という観点からは接種をおすすめします。
ワクチンを受けることで、さまざまな病気を未然に防ぐことができます。
接種するかどうか迷ったときは、かかりつけの獣医師と相談し、ペットにとって最善の選択をしてあげましょう！
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