こんにちは、獣医師まるです。
もうすぐ6月です。じめじめした梅雨、そして急に暑くなる初夏。
人も動物も体調を崩しがちな季節ですね。
そんな時期に特に気をつけてほしいのが「脱水症状」です。
水を飲まないだけでそんなに危険なの?と思うかもしれませんが、ペットの場合、あっという間に重症化してしまうこともあります。
今回は、脱水の見分け方から原因、対処法まで、飼い主さんにぜひ知っておいてほしいことをまとめました!
そもそも脱水ってどんな状態?
脱水とは、体の中の水分や電解質が足りなくなって、体の機能がうまくはたらかなくなっている状態のこと。
「電解質」とは、ナトリウムやカリウムのような体の水の中に含まれているもの。
体の水分のバランスを整える役割があります。
軽い脱水でも、元気がなくなったり、ごはんを食べなくなったり、ちょっとした変化が出てきます。
ひどくなると体が震えたり、痙攣を起こすこともあるので油断は禁物です。
脱水の原因ってなに?
脱水は「体に入る水の量が少ない」もしくは「体から出ていく水の量が多い」場合に起こります。
それでは、体の水分が失われる状況をざっくりと考えてみましょう。
体の水分はどうやって外に出る?
- 尿として排泄
- 呼吸で出ていく
- 皮膚からの蒸発(これは動物ごとに大きく異なります)
- 下痢(腸で吸収されなかった水)
- 嘔吐(腸まで届かず吸収されなかった水)
尿や呼吸、皮膚からの水分の喪失は正常な範囲内であれば問題ないです。
しかし、体調や環境により過剰に水分が失われると脱水につながります。
脱水の具体的な原因
では、実際にはどんな場合に脱水が引き起こされるのでしょうか?
具体例を見てみましょう。
- 暑さや湿気によるパンティング(ハアハアと口を開けて行う呼吸のこと)
- 水を飲む量が減る
- 下痢や嘔吐
- 発熱
- 慢性腎臓病・心疾患による利尿薬の使用
- 糖尿病・ホルモンの病気 …など
水を飲んでいても、水分が失われるスピードに追いついていなければ脱水になってしまいます。
どうやって見分けるの?簡単なチェック方法!

水は飲んでるけど、量は足りてるのかな?脱水かどうか見分ける方法が知りたい!
それではおうちでできる簡単なチェック方法をいくつかご紹介します。
- 皮膚の弾力チェック
首の後ろの皮膚を軽くつまんでパッと離してみてください。
→すぐ元に戻れば正常。
→つまんだ跡が残り、じわっとゆっくり戻る(2秒以上かかる)なら脱水状態。 - 歯ぐきの湿り気
健康なときはしっとりピンク色の歯ぐき。
脱水の程度により粘り気が増していき、重度の脱水では乾燥状態になります。 - 全体的な様子
なんとなく元気がない、ごはんを残す、いつもと違う動きをしている時も、脱水が隠れていることがあります。

また、1日に必要な飲水量が取れているかをチェックするのも大切です。
1日に必要な飲水量の計算方法は、こちらの記事(犬の1日の飲水量についての記事)を参考にしてみてくださいね!
ちなみに猫ちゃんの1日の飲水量はワンちゃんの飲水量の7〜8割ほどが目安です。
特に注意が必要なのはどんな子?
体の小さな子、シニアの子、病気がある子は特に注意です。
例えば腎臓病を持っている子は、水をたくさん飲み、尿もたくさん出します。
(腎臓病のステージにより、その程度は異なります。)
そして脱水になりやすいです。
腎臓病や心臓病で利尿薬を使っている場合は、尿として水分がたくさん出てしまい、脱水になりやすいです。
子犬・子猫も体内の水分量が少ないため、ひとたび脱水が起こると短時間で重症化してしまうケースもあります。
特に下痢・嘔吐・高熱などがあると、数時間で危険な状態になりかねません。
ぐったりしている、震えがある、というときは迷わず動物病院へ。
自宅でできる対処法は?

若干脱水かも?でも元気や食欲はある。病院に行くほどでもないような…。

病院で脱水気味と言われた。しっかり水分とらせるようにと言われたけど、具体的に何すればいいの?
そんな時はまず自ら水を飲むような工夫をしてあげましょう!
例えば、「ちょろちょろと流れる水が好き」「ボトルタイプよりお皿の方が飲みやすい」など、それぞれ個体差があるので、自分のペットに合った水のあげ方を探してみてください。
また、他の体調不良が原因で水を飲む量が減った、という場合はさらに工夫が必要です。
体調不良で水を飲む量が減った時の工夫
- 新鮮な水道水と清潔な容器にする
飲まないからと言って、水をいつまでも入れっぱなしにはしないでください。
容器も綺麗に洗って、新しい水がいつでも飲めるようにしてあげましょう。 - 水の容器の高さを変えてみる
高齢になるにつれ、首を上げる、下げるという動きが苦手になります。
負担なく飲めるよう、容器の高さを調節してあげましょう。 - 水の温度を変えてみる
体調を崩している時は体温調節がうまくできないこともあります。
そんな時に冷たすぎる水をあげると負担になってしまいます。
常温〜ぬるま湯にしてあげてみましょう。 - 味や香りをつけてみる。
ささみの茹で汁ならよく飲んでくれた、なんてことも。
ペット用の経口補水液や経口補水ゼリーも市販されています。
人間用のポカリスエットのようなドリンクは、糖分が高くそのまま与えるのはNGです。
しかしペット用品がすぐ手に入らない、どうしても水を飲まないなど困った状況なら応急処置として試すのはありだと思います(個人的意見ですが)。
その場合、3〜10倍程度に薄めたもので試してみてください。
毎日これらばかり与えるというのではなく、補助的に活用しましょう。 - ウェットフードに変えてみる
食事による水分摂取量を増やす方法です。
ウェットフードはドライフードに比べて水分が多く含まれているため、同等の栄養を摂取するにはドライフードよりたくさん量を食べる必要があります。 - 水飲み場の数を増やす
ペットにとって今ある水飲み場が何か気に入らないこともありえます。
特に多頭飼いのお家は、飼育頭数に合わせて複数の水飲み場を用意してあげましょう。
動物病院ではどう治療するの?
脱水の程度に応じて、動物病院では点滴治療を行います。
- 軽度〜中等度:皮下点滴
皮膚の下に水分を入れる方法。数分でできる処置です。
- 重度・ぐったりしている:静脈点滴
入院、もしくは一時お預かりしてゆっくり時間をかけて行う処置です。
※牛などの大型動物では静脈点滴が主流です。

まとめ
脱水は、「ちょっと水飲まないだけ」と軽く見られがちですが、ペットたちにとっては命に関わることもあります。
特にこれからの季節、室内でも脱水は起こります!
『なんかおかしいな?』と思ったら、迷わず動物病院に相談しましょう。
普段からの予防と早めの対応で、大切な命を守ってあげましょう。
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